第1条第一条
1 この条約でいう湿地っていうのはな、天然のもんでも人工のもんでも、ずっとあるもんでも一時的なもんでもかまへんし、さらに水が滞ってても流れてても、淡水でも汽水でも鹹水でもかまへんのやけど、沼沢地、湿原、泥炭地または水域のことをいうんや。低潮のときの水深が6メートルを超えへん海域も含まれるんやで。
2 この条約でいう水鳥っていうのは、生態学の上で湿地に頼って生きてる鳥類のことやねん。
何かの決まりごとを作るとき、いちばん最初にせなあかんのは「言葉の意味を決めること」なんやね。この条文がまさにそれで、「湿地」と「水鳥」っていう、この条約で何百回も使う二つの言葉の中身をここで決めてるんや。いわば条約全体の玄関口やね。ここの決め方ひとつで、守れる場所の範囲ががらっと変わってまうんやから、地味に見えて責任重大な条文なんよ。
例えばな、町内会で「花壇を大事にしましょう」って決めるとするやろ。そのとき「花壇」の意味を「レンガで囲った四角い花壇だけ」にしてもうたら、Aさんが玄関先で育ててるプランターも、Bさんちの庭の隅の小さな花畑も、ぜんぶ対象から外れてまう。ほんまに花を守りたいんやったら、「花が育ってる場所はぜんぶ」って広めに決めとくほうがええ。この条約はまさにその発想で、天然でも人工でも、水が止まってても流れてても、真水でも塩水でも、沼も湿原も泥炭地も、潮が引いたとき水深6メートルまでの浅い海まで、みーんな「湿地」に入れてしもたんや。田んぼやため池みたいな人の手が入った水辺も仲間なんやで。
なんでそこまで広げたんか。それはこの条約の本当の主役が水鳥やからなんやね。第2項で「水鳥」を「生態学上湿地に依存している鳥類」って定めてるのがヒントや。鳥たちは「ここは天然、ここは人工」なんて区別せんと、暮らせる水辺に降りるやろ。せやから人間の側の線引きやのうて、鳥の暮らしの側から範囲を決めたわけ。実際、日本で最初に登録された釧路湿原みたいな典型的な湿原だけやなくて、谷津干潟みたいな干潟も同じ「湿地」として登録されてるんやで。
これ、要するに「守りたいもんの目線で言葉を決める」っちゅう話なんやね。定義っていうと無味乾燥に聞こえるけど、懐を広く取ったこの第一条があるからこそ、あとに続く条文がぜんぶ生きてくる。最初の一歩で器の大きさが決まる、ええお手本やと思うわ。
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